バブル期に流行したビッグシルエットのミンクのコート。
リッチなマダムのみならず、ボーナス払いやローンで購入す
る20代OLもいて、ボディコンワンピースの上からゴージャスに身にまとい、
「ブイブイ言わせていた」(死語)ものだ。それから、20年。「時代遅れで着られないけど、すごく高かったから捨てられない」。そんなタンスの肥やしを、今風のボレロや小物によみがえらせると評判の、ブティツクの扉を開けてみた。
(文 重松明子、写真 矢島康弘)
(写真説明:ビジュウの店内。毛皮の状態とニーズに応じて
リフォーム、リメークを決める=千代田区)
帝国ホテルプラザ(千代田区内幸町)の「ビジュウ」。ファー(毛皮)ファッションが大流行しているこの秋、クチコミで人気が広まり、10月だけでも160点ものリフォーム
を受注している。
併設アトリエをのぞくと、再生を待つミンクやセーブルなどのつややかな毛皮が所狭しと吊るされ、熟年の職人が懸命にミシンがけの最中だ。
「納期は、3、4カ月後。生産能力いっぱいの注文をいただいており、私も店番をしながら作業しています」と、社長兼デザイナーの目黒京絵さん。裏地やビーズなどを、海外の問屋街に買い付けし、一般的なリフォーム店にはできない、手刺繍などを駆使した豪華かつガーリッシュなリメークで永遠の乙女心をつかんでいる。

(写真説明:一着のコートから、バック、ストール、財布、ベストを制作中)
取材時に店を訪れていた栃木県の主婦、平沢美代子さん(62)は、
25年前に大奮発したイタリア高級ブランドのミンクのコートをバックやショールにリフォームした。「ミンクのロングコートなんて、今どき恥ずかしくて着られませんが、小物なら嫌味なく普段使いできて大正解。ジーンズにも合うんですよね。お友達に
「どちらの?」とよく聞かれます」
リフォームの目安はストール5万2500円から、ベスト4万7250円から。
状態やデザインにより変わるが、1着のコートから、4,5点作っても
20万円程度に収まるケースも多いそうだ。
女性服や小物を販売する「ビジュウ」は創業25年。毛皮リフォームは平成20年、
「暖冬で着なくなった毛皮コートを無駄にしたくない」という顧客の声に応えて始めたそうだ。「縫い目が毛足に隠れてみえない毛皮は実はリフォームに適した素材。
高いだけあってミンクの耐用年数は約70年もあるので、一生モノとして長く使ってほしい」と目黒さん。

(写真説明:ミンクコートから作ったストールを羽織る目黒京絵さん。
リバーシブルで裏は全く違った印象に)
通常100万円以上はするミンクのコート。利用者はそれらをもてあましているアラフォー以上の富裕層が中心だが、最近は10万円程度の上質な古着を購入して持ち込む「しっかり者」もいるそうだ。材料費を取らずに実費販売している
サンプル品もミンクの小型バック(3万1500円から)などが、
買いやすいお値段で好評という。「良いモノを長く大切に着る洋服の文化を、
若い人にも広げたい」と目黒さん。洋服のリメーク教室を開く構想も持っており、
「目指すはユザワヤの高級版」だそうだ。「早い、安い」の使い捨てファストファッションにも飽きたころ。高価な一着に一生かけて向き合う心意気が新鮮で美しく、
長い目でみればお得にも思える!?
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